12/08:南米ペルーの世界遺産「ナスカの地上絵」で、新たに168点もの地上絵が発見されたことを、山形大学ナスカ研究所の研究グループが記者会見で発表した。
新たな地上絵の中には、おかっぱ頭の女の子にも見えるような謎が多いものもある。
ナスカ文明といえば、13年前の研究で、古代ナスカ人たちは森林伐採を加速させたために文明が滅んだという説があり、そのことも併せて考えてみたい。
◆13年前のブログ記事
13年前の2009/11/02に『探求三昧ブログ』で、「ナスカ人は自然破壊で滅亡した?」と題した記事を書いていた。
この日、ロイター通信で、「地上絵残したナスカ人の滅亡、森林伐採で加速=研究」という内容が報道された。
それによると、ナスカ人は1500年前に森林を伐採して、自らの滅亡を早めてしまったという。
そのことが、英ケンブリッジ大学などの研究者らによって明らかになった。
◆ナスカ文化
紀元前後から800年頃まで現在のペルー海岸地帯のナスカ市周辺では、ナスカ文化が栄えていた。
そこでは狩猟や農業を主な生業とし、わずかに漁業も行われていた。
はじめは宗教的性格が強く、のちに軍事的性格が強まるようになった。
◆山形大学の発見
12/08に発表した、山形大学ナスカ研究所の副所長を務める坂井正人教授の研究グループは、3年前2019年6月から2020年2月にかけて、現地の考古学者と共同で調査を行った。
その調査では、AIやドローンを活用してナスカの市街地付近などで解析や調査を行った。
その結果、あわせて168点の地上絵が新たに見つかった。
2004年に調査開始後に、これまで見つかった地上絵は358点に及ぶ。
推測するに、2000年も前に描かれた地上絵は、上空から見ても薄くて判別が難しいものもあり、調査の過程でAIを取り入れたのだろう。
新たな地上絵には、人間やネコ科の動物、それにラクダ科の動物の群れなどを描いたとみられ、中には、長さが50mほどのものもあった。
坂井教授は「地上絵が描かれた目的は今もよくわかっていない。今後も、AIを活用して地上絵の分布調査や保護活動に取り組み、地上絵が描かれた目的の解明につなげたい」と語る。
◆「おかっぱ頭」
以下に、新発見の地上絵のいくつかを示す。
今回の報道で、最も多く紹介された地上絵は、これだろう。
「おかっぱ頭のような」と盛んに報道された。
幅が5mほどと、これまでイメージしていた地上絵に比べると、ビックリするくらいに小さい。
私はパッと見、「チコちゃん」を思い出した。
NHKテレビ『チコちゃんに叱られる』に登場する着ぐるみのキャラクターだ。
◆「ネコ科動物」
こちらは、「ネコ科動物」として紹介されているもの。
幅が12mほどだ。
南米では、1800万年前に生きていた巨大ネコ「シミターキャット(scimitar cat)」の化石がベネズエラで発見されているくらいで、ナスカの時代にネコがいてもおかしくない。
◆謎の人?
他には、ヒューマノイド(人類)のような姿を描いた地上絵も見つかっている。
たとえば、こちらの汗をかいたような人は、高さ7mくらい。
それともオーラとか後光か?
人的な絵としては、こういうのもある。
ふざけているような筆致だが、何かで驚いているようにも見える。
高さは7mくらい。
◆乾いた大地
独ハイデルベルク大学調査によると、ナスカ地方の気候は過去5000年間に大きく変動してきたという。
安定した生活を送るにはリスクが高い場所だが、ナスカの文明は約800年にわたって栄えた。
紀元前200年ころ、人々は河川流域に定住して、綿花やマメ、ジャガイモ、ルクマと呼ばれる果物、小型のトウモロコシなどの作物を栽培した。
最初に地上絵が描かれたのは少なくとも2400年前だという。
ナスカの北西約40kmにあるパルパ地方にも多くの地上絵が残っていて、ナスカ文明より前のパラカス文明の時代に描かれたものと考えられている。
地上絵は、特定の場所で特定の時代だけで描かれたものではなく、多くは以前に描かれた地上絵の上に描かれている。
◆戦いと自然破壊
紀元500年~600年のナスカ文明の末期では、水が乏しかったことが最大の問題だった。
この頃に、砂漠化がどんどん進んで行ったのだ。
13年前の研究論文では、「乾燥化は6世紀末に頂点に達し、ナスカの社会は崩壊した」と結論づけられた。
だが、ナスカ文明の崩壊は、気候変動だけが原因ではなかった。
一部の河川流域で水不足が深刻化したために、流域の指導者同士の紛争が生じたのだ。
これまで、一部の考古学者は、ナスカ人が滅亡したのは大規模なエルニーニョ現象が発生し、大雨や壊滅的な洪水が引き起こされたために文明が滅んだと考えていた。
だが、ケンブリッジ大学などの研究でわかったことは、地域に生息する根の長い木が湿度を保ち、葉が土壌の養分となっていたのが、伐採により空気が乾燥しすぎたため、人々が十分な食料を収穫できなくなったことが大きいという。
研究に参加したキュー王立植物園のオリバー・ホエーリー氏は「過去の過ちが、今の時代に重要な教訓を与えてくれている」と語る。
これは他人事ではなく、この国でも自然破壊が進めば、「明日は我が身か」となるかもしれない。
◆ネット上で地上絵を「鑑賞」する
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