タイでは挨拶の際にワイ(合掌)を行うが、実は日本の合掌とは少し異なり、そこにはタイ仏教の深い意味が込められていることを、私も今回調べてみて初めて知った。
遥梛がワイをしている
サルちゃん(タイ人の妻)が撮影した写真をAmazonPhotosで見ていたら、3歳になる末娘の遥梛(はるな)が、珍しくワイ(合掌)をしていた。
うちの3人の子供たちは、赤ちゃんの頃にタイの挨拶である「サワッディーカー」(こんにちはの挨拶)と親が言うとワイをするように躾けている。
だが、大きくなるにつれて忘れてしまい、親も仕向けなくなる。
だが、母子で近所のたけのこ公園へ行った時に、なぜかワイをしていた。
サルちゃんが「サワッディーカー」と言ったのだろうか。
ちなみに、タイ語の挨拶の言葉である「サワディー」は、近世に作られた言葉だ。
サンスクリット語のsvastikaa(卍まんじの意味)の活用形であるsvastiがタイで訛ったもの。
「サワッディー」は「良い吉祥」という意味になる。
語尾の「カー」は女性の場合で、男性は「カップ」となるが、これは語末につけて日本語の「~です」「~ございます」のような敬語になる。
タイのワイ
ここで、タイのワイについて造形を深めようと、Webで調べてみた。
そして、初めて知ったことがある。
タイの合掌であるワイは、掌を完全に合わせるのではなく、中を少し膨らませる。
これは、仏教と縁の深い蓮の蕾を表しているという。
合掌の手の位置はとても重要で、相手が偉い人であるほど、「顎下<鼻先<眉間」と、手の高さが異なる。
2011年9月29日にタイ人と結婚して11年になるが、このことは初めて知った。
私は今まで、ワイをする時に意識していなかったので、掌はついていたかもしれない。
もっとも、無意識で合掌すると、掌は完全にはくっつかない。
以上のことをサルちゃんに確かめると、確かにそうだと言う。
ワイを行う時には、掌に何かを入れるかのように、少し膨らませる。
日本仏教では?
このことは、日本の仏教の合掌と違うかというと、そうとも限らない部分がある。
私が調べた限りでは、大乗仏教でも密教系の宗派などで「未敷蓮華合掌」(みふれんげがっしょう)と呼ばれる形がある。
これは、タイのテラワーダ仏教と同様に、やはり蓮華(レンゲ)の蕾(つぼみ)を表すために掌の内側を少し膨らませるのだ。
ちなみに、ヨガでは「アンジャリムドラー」という合掌の印があり、この姿勢でマントラを唱える。
この時、手を柔らかくして、掌の内側に空間を作ることとある。
ヨガと仏教と、どちらが先かというと、蓮華の意味を考えると、仏教から伝わったのかもしれない。
ワイの作法
タイのワイについて、作法的なことについて、もう少し書いておく。
ワイは、必ず目下の人間から挨拶として行う。
互いに同列の立場ならば、どちらから先でも構わない。
タイで、店舗の店員からワイで挨拶をされても、こちらもワイを返す必要はない。
日本で店員がお辞儀をしても、返さないのと同様だ。
ワイの手の高さにも意味があって、相手が目上の人ほど、あごの下→鼻→眉間と、位置が高くなるという。
そのことをサルちゃんに確認すると、そこまで細かく意識はしないが、たしかに手の高さは意識して、もちろん仏教寺院でブッダにお祈りをする際には最も高くするという。
私はかつて、タイの仏教寺院で、ブッダにお祈りしている人が両手を頭よりも高く上げてワイしている人を見たことがある。
これは一般的に意味があるのかとサルちゃんに聞くと、そういうことをする人もいるという。
本来の作法ではないが、人によっては行うようだ。
私のようにタイに何度か訪れて、タイのことを良く知っているつもりでも、結構知らなかったこともあり、自分でも勉強になった。
【参考】
※『知っておきたい仏像と仏教』