2022/11/30

【実体験】高齢の父か母から生まれた子供のメリット・デメリット~世界の著名人でもこんなに高齢出産が多い

 


日本では婚姻年齢が年々高くなるにつれて、「高齢出産」で生まれる子供が増えている。

高齢の父・母から生まれた子供は様々な健康上のリスクがあることが知られているが、メリットもあることはあまり知られていない。

50代半ば以降に3人の子供が生まれた私たち夫婦の経験も踏まえて、高齢出産のメリット・デメリットを紹介する。


◆婚姻年齢の上昇

厚生労働省の統計によると、初婚の男女の平均の婚姻年齢は、30年くらい前は夫が29歳くらい、妻が26歳くらいだったのが、10年くらい前から夫が31歳くらい、妻が30歳くらいまで上昇し、その後に頭打ちに近くなっている。

(下記画像クリックで拡大表示)


これに伴い、出産年齢も上昇しつつあり、結果として高齢出産の割合が高くなっている。

下記のグラフは、人口動態統計をもとに、平均初婚年齢と出産時の母の年齢の平均値の推移をまとめたもの。


これを見ると、1975年には第1子の出産時の母の平均年齢が26歳くらいだったのが、2019年には31歳くらいと、45年間くらいで5歳ほど高くなった。



◆高齢出産の増加

通常は35歳を過ぎると「高齢出産」といわれる。

もちろん、一般に女性では高齢出産が可能な年齢の上限がある。

このような、子供が生まれる時の父と母の年齢が年々高まっていることは、世界的な傾向のようだ。


だが、医療が年々進歩していくにつれて、高齢で出産する母親が増えてきた。

2020年に生まれた赤ちゃんの約30%は高齢出産だったという。

また40歳以上は約5.9%だった。

50歳以上の出産となると、2019年の人口動態統計では全国で68人で、全体の0.007%となる。


1995年に生まれた赤ちゃん約118万人では、35歳以上が約9.5%、40歳以上が約1.1%だった。

これは、男女雇用機会均等法の施行によって女性の社会進出が進んで晩婚化が進んだことも、女性の高齢出産が増えた要因のようだ。



ずっと以前になるが、南米の友だちから聞いた話では、向こうの国では50歳を過ぎて出産する女性はそう珍しくもないそうだ。


◆母親が高齢出産のリスク

母親が高齢で出産するケースでは、様々なリスクが生じてくる。

以下に、どのようなリスクがあるかをまとめる。


◎難産になりやすい

加齢によって産道や子宮口が硬くなっているためで、帝王切開の確率も高まる。


◎自然妊娠の確率が低くなる

これは、卵子の老化によるもの。

一般に、自然妊娠できるのは、閉経を迎える数年前の45歳くらいまでとされる。


自然妊娠の確率は、20代前半の女性が自然妊娠する確率を100%とした場合に、40代後半の女性は5%という海外のデータがある。



◎婦人疾患のリスクが高まる

子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人疾患を患う可能性が高くなる。


◎産後うつ

ある研究では、35歳未満に比べて35 歳以上では「産後うつ病」が増えるという報告がある。

また、高齢出産では産褥精神病が多いという文献もある。



◎先天異常

生まれた子供の先天異常の確率は、一般に高齢になるほど高くなるといわれている。

たとえば、ダウン症を発症する確率は、母親が25歳では約1300人に1人だが、40歳では約110人に1人と確率が急上昇する。


◎発達障害

子供のASD(自閉症スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害のリスクが高まる。

これは、高齢になると卵子や精子が遺伝子エラーを起こしやすくなるためといわれる。


◆父親が高齢のリスク

では、父親が高齢で生まれた子供はどうだろうか。

米国の研究によると、父親の年齢が子どもの精神疾患リスクに影響を与えるという結果が出ている。


発達障害の子供が生まれる確率では、父親が45歳の時に生まれた子どもは、20~24歳の時に生まれた子どもに比べて、自閉症スペクトラム障害(ASD)を患う可能性が3倍、注意欠陥・多動性障害(ADHD)を患う可能性が13倍、双極性障害を患う可能性が24倍と高かった。


高齢の父から生まれる子供は、自閉症、がん、うつ病、精神疾患、ダウン症になる確率が高くなるが、母親が高齢なケースほどではないという。

ある研究では、高齢の父親から生まれた子供は、若い父親から生まれた子に比べて知能がわずかに低いという結果が出ている。



◆高齢の母のメリット

高齢の父か母から生まれた子供には、デメリットがあることは今まで書いた通りだが、中にはメリットと考えられる点もあることは、あまり知られていない。


ニュージーランドの研究では、平均年齢46歳の男性70人を対象に健康診断を実施した結果、親が年を取ってから生まれた子供は、46歳になった時点で血圧が低く、コレステロール値やグルコース代謝なども良好の結果だった。


2014年の英国の研究では、40歳以上の女性から生まれた子供は、肉体的にも健康的にも、より若い母から生まれた子供よりも良好な状態だった。



高齢の母親から生まれた子供は、3歳までに怪我をする確率が22%低く、入院する確率も3分の1程度だった。

母親が高齢出産で生まれた子供は、IQが高い、学歴が高いという研究もある。



◆高齢の父のメリット

では、高齢の父から生まれた子供にメリットはあるだろうか。

米ノースウエスタン大の研究によると、高齢の祖父や父親から生まれた子供は、他の子供よりも長生きする可能性がある。


米マウントサイナイ・アイカーン医科大学の研究グループは、高齢の父親の息子の方が、若い父親の息子よりも「ギーク」になる可能性が高いことを示唆する結果を発表した。


「ギーク」とは、知的能力や集中力が高く、IT技術などの特定の分野にマニアックな関心や才能を示すが、社交性には欠けるタイプの人々を指す。

これを読んでギクッとしたが、正に私がギークかもしれない。


発達障害にもメリットがあり、適職が色々とある。

そのことは、下記のこのブログの記事で紹介している。



ちなみに、かつては「ギーク症候群」は「アスペルガー症候群」とほぼ同義語として用いられたが、現在では「ASD(自閉症スペクトラム症)」という統一的な呼称が使われている。



◆著名人のケース

一般的に海外では、日本よりもかなり高齢になってから子供が生まれるケースが多いようだ。

以下に、海外の著名人の例を示す。


俳優のリチャード・ギア(1949/08/31- )は、2020年4月に第3子の男児が生まれた時に、妻のアレハンドラ・シルバは37歳で、夫と33歳もの年齢差がある夫婦だった。

マーシャ・クロス(1962/03/25- )はドラマ『デスパレートな妻たち』(2004)などで主演した女優だが、44歳の時に双子の女児を出産している。

女優のマーシャ・ゲイ・ハーデン(1959/08/14- )は、『ミスティック・リバー』(2003)などでアカデミー助演女優賞しているが、44歳の時に双子の男女を産んだ。

女優のジーナ・デイヴィス(1956/01/21)は、アカデミー助演女優賞を受賞した映画『偶然の旅行者』(1988)などで知られるが、46歳の時に第1子の女子を出産し、48歳で双子の男子を産んだ。

男性の例では、ローリングストーンズのボーカルのミック・ジャガー(1943/07/26- )は、73歳で29歳の恋人が男児を出産した。


次に、日本の著名人の高齢出産の例をいくつか紹介する。

推理作家・シャンソン歌手だった戸川昌子さん( 1931/03/23-2016/04/26)は、有効な不妊治療が殆どない1977年に、46歳で超高齢出産で子供を産んだ。

元女子プロテニス選手の杉山愛さん(1975/07/05- )は、40歳だった2015年に不妊治療の結果として第1子を出産し、46歳の2021年に第二子を出産した。

杉山さんのように、不妊治療の結果として高齢で出産する女性も多いようだ。



◆高齢出産で双子?

高齢出産では双子が生まれやすいといわれるが、これは本当だろうか。

前述の海外の芸能人では、たしかに双子の出産が見られるようだ。

一般に双子が生まれる確率は約1%で、確率的には100件の出産で1件が双子になる。


高齢出産の方が双子が生まれやすいというのは本当のようで、理由としては、女性が高齢になると、卵子の成長を助ける「卵胞刺激ホルモン」が多少増えて1回の排卵数が増えるため、二卵性双生児を妊娠する確率が高くなるという。

ただし、この傾向は民族によって異なるようだ。



◆われわれ夫婦の例

私自身、長男が生まれた時には55歳、長女の時には57歳と高齢だった。

そして末子が生まれた2019年には、63歳の高齢の父親になっていた。

写真は末娘の遥梛(はるな)が赤ちゃんの時。


タイ人の妻であるサルちゃんは、歳を言うと怒られるので伏せるが、第1子の時には30歳すぎで、第3子の時にはアラフォーだった。

つまり、高齢の夫婦が3人の子供を設けたことになる。



だが、幸いにして、3人の子供たちには健康上や精神上の問題はない。

強いて言えば、長女がASDではないかと懸念したが、心療内科では診断するまでは行かない「グレーゾーン」だと言われた。


私たちは幸運な部類だったのかもしれない。

だが、ここで書いたようなリスクをあらかじめ知っていたら、特に3人目では子供を作ることを考えただろう。


一般論では、やはり高齢の親のもとで生まれた子供は先天異常を含めて様々なリスクがあり、親が高齢で子供をつくることを検討している夫婦は、そのことを前提に慎重に考えた方が良いだろう。



※『まだ産める? もう産めない? 「卵子の老化」と「高齢妊娠」の真実』 (河野美香、健康ライブラリー、講談社)